クリニックを始めて、
初めて患者さんと相撲を取った。
彼とのお付き合いは、もう5年になる。
はじめのうちは、本当にはげしい症状が多かった。
ユンボに乗って畑仕事に行こうとしたり、
飼っている元気な犬を放して山へ出かけていこうとしたり、
山の木を切り出して木を売りに行こうと言い出したり・・・。
そんなある日
昔の農業学校時代の相撲部の話になった。
「腰投げが得意やったんじゃ。」
「いっちょ、一番取ってみるか?」
「四股名は『小勇(こいさみ)』言うんやで。」
毎週、相撲を取っていると
いろいろな人生の想い出話が出てくる。
はげしかった症状は少しマイルドになった。
彼の秘密基地はビニールハウスだ。
秘密基地のデスクの引き出しからは
お菓子、ジュース、ちょっとエッチな本。
いろいろと分けてもらいたくさんの話をした。
やっぱり、在宅は楽しい。
「せんせい、まだわしは大丈夫か?
お迎えは、まだ来んよう言うといてや。」