第7話 相撲在宅

クリニックを始めて、
初めて患者さんと相撲を取った。

彼とのお付き合いは、もう5年になる。

はじめのうちは、本当にはげしい症状が多かった。
ユンボに乗って畑仕事に行こうとしたり、
飼っている元気な犬を放して山へ出かけていこうとしたり、
山の木を切り出して木を売りに行こうと言い出したり・・・。

そんなある日
昔の農業学校時代の相撲部の話になった。

「腰投げが得意やったんじゃ。」
「いっちょ、一番取ってみるか?」
「四股名は『小勇(こいさみ)』言うんやで。」

毎週、相撲を取っていると
いろいろな人生の想い出話が出てくる。

はげしかった症状は少しマイルドになった。

彼の秘密基地はビニールハウスだ。
秘密基地のデスクの引き出しからは
お菓子、ジュース、ちょっとエッチな本。
いろいろと分けてもらいたくさんの話をした。

やっぱり、在宅は楽しい。

「せんせい、まだわしは大丈夫か?
お迎えは、まだ来んよう言うといてや。」