第11話 船乗り在宅

 

船乗りのヨシさん。

彼は70歳。たくさんのお孫さんをかわいがっておられた。

彼の部屋には、お孫さんや息子さんや娘さんたちとのたくさんの写真が飾られていた。

お孫さんのお名前も、全員紙に書いて掛けてある。

 

彼の生きてきた歴史がこの家にはある。

彼の数々の思い出の品や海外の置物なんかも

玄関から廊下にたくさんあった。

 

世界中の海をまわって

世界中の人達と交流してこられたことが、よくわかる。

 

この家で、彼のお孫さん全員が、最期の日まで、訪問入浴のお風呂介助をした。

足も頭も手も彼のカラダもココロも、みんなで一緒に一生懸命洗った。

 

日本も世界と同じく激動の時代。

超高齢化社会という大海原を大航海中。

この激しく苦しい航海の中でも、

こういった文化(いのち・死の文化)の世代間交流は

何物にも代えがたい財産を生む。

 

いのちの文化や死の文化は、どの時代も不変。

 

 

彼とのお別れは、その大切な文化の継承が行われた。

お孫さんたちの行動で、その素晴らしさがよくわかった。

 

 

ヨシさん、お孫さん、つながっていますね。

未来の日本は、きっと大丈夫ですよ。