心音という愛情

先生、朝早くからごめんなさい。

お父さん、息してなくて。

 

すぐ行きますね。

 

駆けつけると、娘さんが出迎えてくれる。

 

先生、私間に合わなくて。

と近くに住む娘さん。

 

私もおトイレの間に、息止まったみたいで、、、、

 

ご本人を囲むお母さんと娘さん。

 

ひとしきりお話を伺いながら、聴診器を。

 

ドドド、どどど、グググ、、どど、、

 

まだ、心臓動いていますよ。

息が止まってしばらく心臓って動くんですよ。

聴かれます?

 

僕にはいつもの行動だが、

彼女らには初めてのこと。

もちろんご本人さんにとっても。

 

僕の聴診器を、

お父さんの胸にあて、

お母さんが耳を澄ます。

 

ドドド、どどど、グググ、、どど、、

 

あ~聴こえます。聴こえます。

お父さんの心臓の音。

お父さん、お父さん、、、今、

うん、、悪口言えないわね、、、

ほんま穏やか、、良かったわ、、

先生にも、出逢えて、、

お父さん、良かった、、、、

 

その言葉を聴いて、お母さんを見た。

お父さんに出逢えて良かったって聴こえた。

 

もう一度、お父さんに手を合わせ、

診断書を書きに診療所へ。

 

お身体を綺麗にしてくれる訪問看護師と

入れ違いで、彼の家を出た。

 

 

お父さんの最期の心音を聴いて、

最期まで傍に寄り添われた

お母さんへの感謝の音に聴こえた。

良かったら聴いてください。

 

 

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