ああ、ワシはホンマ世界一幸せもんや。
先生、元気出しや。美人の孫は三月結婚や。
痛み止めの頓服を飲み忘れ、歯を食いしばる親父さん。
毎回決まって頓服の説明はするんやけど、、、、
こんなに痛い時に、先生ちょうど来てくれて、
これ飲んで、痛いの取れたわ。ホンマありがたい。
もうあっちに行ってもエエねんけどな、痛いときはアカンわ。
これ飲んだら楽になったわ。ホンマ良かった。
100才独居でちょっと物忘れのあるおじいさん。
僕なんかよりよっぽど我慢を知っておられる。
それでも、やっぱりガンの痛み。
それも喉のガンやから痛い上に薬飲むのも一苦労。
痛いけど、我慢して、我慢できなくて、お薬飲みたいけど、
飲むのもまた痛いから、耐えるほうがいいかと思ったり。で、揺れ動く。
飲んでもいいし、飲まんでもいい、
けど、頓服飲んで、痛みが和らぐと、
親父さんは、ひとつだけ決まって僕に言う。
先生、もっと元気出して行きや。今日はありがとな。
律儀な彼は玄関まで僕を送ってくれる。
さっきまで、痛みで歪んだ顔が嘘のよう。
満面の笑みで深々とお辞儀してくれる。
毎回仰る「もうお迎えでエエで」とは裏腹で、今日も、
三月にお医者さんに嫁ぐ美人看護師さんの自慢のお孫さんのお話をされていた。
エンドロールには早すぎる。症状緩和も諦めたくない。結婚式に出てほしい。
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