先生、私ね、たった一つだけ、そう、
一つよ。一つだけでいいの。お願い。
私が死んでるの見つけたら、診断書。
診断書だけちゃんと書いておいて。
警察さんにお世話になるのは、私は良いけど、
残していく娘たちに迷惑かけるでしょ。
だからね、診断書だけでいいの、お願いよ。
夜中に時々ね、頭がボーってしたりして、
手が痺れたり、喉が痛くなったりいろいろで、
でもね、それはね、夜中やから、迷惑かけたくないから、
お医者さんにお願いなんてしないのよ。
自分で3時間くらい、手をグーパーしてね、
自分で治しちゃうのよ。だから、大丈夫。
お願いはたった一つ。死亡診断書だけお願い。
10年前、尼崎のお家でね、主人見送った時からね、
お医者さんに頼むことを、勉強してきたんよ。
お医者さんに頼めるのはたったの一つだけよ。
あれから10年。そして、これから10年で、
私は100歳。そこまで生きたいけど、
娘らに迷惑は絶対ダメ。警察はダメ。
それこそが殺人じゃなく尊厳死なのよ。
先生、もう一度言うわ。
死亡診断書お願いします。
これまでの10年で学んだの。
これ以上の治療は何も要りません。
この先10年も。お願いします。
90歳のお一人暮らしの素敵な女性。
彼女とのザイタク医療が始まった。
彼女に多くの事を教えて頂こうと思う。
良かったら聴いてください。
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