紫色のとっても美しい時間

先生、私ね、ホント、風邪が長引いちゃって、

こっちに来たら役立たずや思って、ホント、

ごめんなさいね、なかなか、三田にこれなくて。

 

いろんな理由はあるが、母の心の中にある本当の理由は、

大切な娘を見送らなければならない母の悲しみの様だった。

 

人はいつか必ず旅立つ。

その最後に立ち会わせていただけるザイタク医療。

残念ながら、時に、順番が入れ替わることもある。

その苦しみは想像を絶する。僕らは待つしかできない。

でも、人間は素晴らしい。母の強さに期待して待つ。

 

その時に向き合おうとしているご本人とお母様。

僕らも彼女らをなんとか支えていけるように、マフも、

みんなからの津軽甚句も、介助用リフトも、ケアエールも、

全部全部のできること、全てを投入する。それで、今を暮らすことを願う。

その時まで、『暮らし』をあきらめることなく踏ん張ってほしい。

 

 

 

旅立とうとしている娘と母の二人の時間は、

夜明け前の紫色のとっても美しい時間に見えた。

 

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