訪問に行くと、「これ飲んで」といつもサイダーが登場するお家がありました。
入院するのが当たり前、そう思われていたお家でした。
何度も入退院を繰り返される中、
とうとう入院中に「家に帰る!」と強引に帰られることも・・・
動けなくなったとき、本人は入院は嫌だとハッキリ言われました。
そんな夏の終わりに、お出逢いしました。
訪問したとき、お父さんはうちのセンセイにお願いされました。
「センセイ、好きなこと言うけどな、見捨てんといてな!」
「大丈夫、大丈夫」
奥さんがサイダーを出され、
「何にもないけど、飲んで。お父さん、サイダーすきなの」と。
夏の暑い日、サイダーをみんなで飲みました。
また違う日、奥さんが「周りから入院しないでいいのかといわれた」と弱弱しく一言。
「お父さん、入院、したい?周りが心配してるみたいよ」
お父さんは元気な声で一言、
「入院なんかせんでよい!センセイ、見捨てんといてな!」
「大丈夫、大丈夫‼」
「最後にええセンセイにであえて、ほんまによかった、よかったわ~!」
奥さん、「それなら家でみます」と決意表明!
手にはサイダーがありました。
いよいよ、旅立ちの時。
最期まで家で過ごすことができ、お父さんの思いは叶えられました。
センセイが死亡診断書の説明を始めたとき、
奥さんは台所に。
その手には、サイダーがありました。
季節はもう秋。
氷のカランという音が寂しく感じるサイダーでした。
最期までセンセイは約束を守りました。
家で過ごせてよかったね。
お父さんの顔は少し笑っているように見えました。