先生、僕はキッチリとしたいのです。
だから、ちゃんと確認するんですが、
こんなお電話してもよろしいでしょうか？
先生のお話をちゃんと伺って安心しました。
医療用麻薬の頓服の仕方や浮腫の対応の仕方、
腹水に対する考え方、経口摂取や点滴の事、
普段の散歩や遠出の旅行の事、最後の過ごし方、
最後旅立つ時の事、これから自分の身に起こる
様々の事を、いつもちゃんとお尋ねになられる。
そして、ノートに書いて、次の診察やお電話で、
再度お尋ねになられる。そして、その都度納得されると、
丁寧に、丁寧に、「先生、ありがとうございました。」
と深々とお礼をこんな僕にでもお伝えになられる。
今日、夕方、呼吸停止の一報を受け、
近くで診療していたので、駆け付けた。
まだ、お身体は温かく心音も聴こえる。
その場におられた奥様と次女さんに、
お父さんの最後の心音を聴診いただき、
もうしばらく、天国に上がられる時間を、
ご家族で過ごして頂く。
そうこうしているうちに長女さんも駆け付けられた。
ご本人様を囲んで、奥様と娘さん達、お孫さん達で、
お別れの涙を流された。大切な時間を過ごされた。
少し落ち着かれたところで、再度聴診させていただき、
心停止も確認。死亡診断させていただいた。そして、
診断書の手持ちがなかったので、診療所に戻り、
記載して再度お届けすることをお伝えして、
今から看護師と一緒にお身体をきれいにすることを説明し、
その場を離れようとしたその時だった。
数日前も彼は娘さんやお孫さんを集めて一人一人に「ありがとう」と、
話されたそうなのだが、そのうちのお一人の小学1年のお孫さんが、
僕の方に、すっと振り向いて、深々と頭を下げながら、
「先生、ありがとうございました。」と大きな声で話された。
旅立たれた礼儀正しいお父さんがお孫さんに乗り移って話されたのかと思うぐらい、
お孫さんの礼儀正しさにびっくり。流石、彼が可愛がっていたお孫さんだなあと感動した。
愛すべきものを守るために。
彼女たちが生きていけるように。
彼は、彼自身の最後の時間を、
人生において何よりも大切なことを、
大切な家族に伝えるために使ったんだ。
そんな風に感じた素敵な旅立ちだった。合掌。
良かったら聴いてください。
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