世界中の誰よりきっと、彼を愛している米寿の彼女。

足りないと困るものが足りないから困るのよ。

それはね、これよこれ。そう言って指を丸くして見せてくれた。

 

息子はね、お金がないのよね。お金のない息子の世話になんかなれないわ。

私も、そろそろあっちの世界にね、逝く支度を始めようと思ってるの。

まあ、神様次第だけどね。私は、逝けたとしても地獄。

きっと、天国からはお呼びはかからないわよ。

 

でね、そうでしょ、こんなだから、その時が近づいて、

やっぱり、息子に世話にならないと駄目な時が来たらね、

都会の息子のお家に行こうかとは思うけどね、息子ね、

私の息子たちね、ホントお金、持ってないのよ。

 

 

お金持ってない男はダメよね。その点、

お父さんは違うのよ。私60歳で再婚したのよ。

あの人素敵だったわ。お金もたくさん稼いでたしね。

残してきた息子たちも、いよいよ今年三月で定年。

明日、私の数えで米寿のお誕生日なんだけどもね、

その息子らも、私にご馳走してくれるみたいでね。

いつもお父さんはバラの花束はなかったんだけど、

美味しい料理、素敵なレストランに連れて行ってくれたわ。

それにね、あっちこっち日本中、旅に連れて行ってもくれたし。

だからね、お金のない息子らのお世話になる前にね、

良く貢いでくれたお父さんにね、ちゃんとね、天国行き、

見送ってあげてね、それで私の地獄行きを、息子の家で待つわ。

 

そんなお父さんに今日今から先生が帰ってから、タクシーで、

逢いに行ってくるわ。世界中の誰よりきっと、私が彼の事、

一番わかってるの。だってね、施設着いたら、向こうから、

普段はボーってしてるのに、私に一生懸命手を振るのよ。

 

 

 

明日、数えで米寿の彼女は、独居で、

肺高血圧終末期、徐脈で40回ないくらい。

これだけしゃべるのに、かなりゆっくりで、

かなりの時間がかかるんだけど、

100歳手前の彼の自慢話は必ずされる。

 

世界中の誰よりきっと

彼を愛しているのだろう。

 

まつ毛とかちゃんとマスカラもして、

アイシャドーもして、口紅もして、

髪もしっかりとアップに固めて、

今から、タクシーを呼ばれるそうだ。

 

やっぱり、愛しか勝たんって思った。

 

今日はやっぱりこの曲です。

中山美穂さんに哀悼の意。

良かったら聴いてください。

 

 

 

 

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