風の中「大丈夫」そう聞こえたよ。

認知症のある高齢のお母様と、

二人暮らしをされていた彼女。

 

昨年お腹にがんが見つかり、

病院から余命宣告を受けた。

 

大学病院から紹介され、

外来にお越しになった時、

彼女はこう話された。

 

先生、まだ私実感ないんです。

人生は、、もう長くないとか、

お腹にがんが出来てるとか、、

ホントは違う人の話かもって。

だからもうしばらく、、先生、、

こうして外来に来て私のお話を、

聞いてもらったりお話ししたり、

そんな感じでのんびり過ごして、

家の中のものの片づけしたり、、

色々考えてみたいんです。だから、

家に往診するのは、、もう少しだけ、

待って欲しくて、、ダメですか先生?

 

 

先月の外来でそう話されていた彼女から、

昨夕お電話が急にあった。すぐ来て欲しいと。

電話口の向こうの彼女は、息も出来ないほど。

ご自宅に駆け付けるとお母様のベッドの上で、

胸を押さえながら苦しんでおられ言葉も出ない。

 

いわゆる急変されておられ、緊急処置が必要で、

ここでの治療は難しいと、直ぐ判断できたので、

いつも連携してるホスピス病院と連絡を取り合い、

緊急入院の手配をした。

 

 

救急車を待つ間、不安でいっぱいの娘さんに

認知症のあるお母様はずっと背中を擦りながら、

 

だいじょうぶ。だいじょうぶ。

もうすぐ救急車が来るからね。

 

って、ずっと声を掛けておられた。

 

娘さんの病名も知らされていないお母様。

認知症があっても全てを悟られたご様子で、

救急車に乗り込む娘さんと救急隊の背中を、

風で寒い中、ずーっと、見送っておられた。

 

 

『人生会議』って、どうすれば良かったのか。

彼女だって、ちゃんと人生の準備をされていた。

だけど消したい病気はそこにあって消えなくて。

 

 

母親のこれからもすごく心配で、娘さん救急車を待つ間、

母親のおむつと母親の食材の事をずっと気にされていた。

 

一方、

 

解決できない苦しみの渦中、そんなどうしようもない中でも、

認知症があったとしてもお母様は、ずっと娘さんの母だった。

 

 

地域の繋がりが壊れつつある今、

繫がりの再建だけが希望の光だ。

僕らはそれをきっと知っている。

急ごう。今ならまだ、間に合う。

 

風の中「大丈夫」そう聞こえたよ。

良かったら聴いてください。

 

 

 

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