心づもりを玉手箱に。

心づもりを玉手箱に。

 

「どこか行きたいとこありますか?」

「そうね、、、、、それより、、、、、身の回りのことができるようになりたいわ」

少し暗いお顔で話される。

 

いくつもいくつも用意されていた質問、

ご病気に関することがレポート用紙にたくさん書いてあった。

全部質問をしてもらってから、聞いてみた会話。

 

 

その後に、

飼っているワンちゃんの話、

一緒に暮らされているご家族の話、

ご主人の通勤の話、

息子さんのお仕事の話、

学生の娘さんの勉強の話、

ご自身の仕事の話。

 

それから、

これから、どう暮らしたいかも、話していただく。

どう、この大切な時間を過ごしたいかも、教えていただく。

 

介護保険の話や、ベッドの話、手すりやトイレの話、お風呂の入り方の話。

 

彼女の生活を、少しずつ教えていただく。

暮らしていることの実際の中身の話。

生活の話

 

やっと、お顔が柔らかくなってくる。

さっきまで、息苦しそうだったのが、おさまってくる。

 

「外に出てもいいのかしら?階段で息が上がっちゃうの」

「マンションの階段もキツいですよね。

タナカは、太っちょやから、息ハアハアでした。一緒です。

休み休みしながら、登れば大丈夫。

5分でも10分でも外に出て、外の空気吸いましょ。

いろんなこと、あきらめる必要はないですよ。

まだまだ、生きてるんですから」

 

 

しばらくして、帰りがけに、

「さっきの話ですけど、、、、ワタシ行きたいとこあります。

娘の卒業式。袴姿を見てあげたいの。入学式も出たんですよ。今度は晴れて卒業式!!」

涙を浮かべながらも、しっかりと笑顔で、話された彼女。

 

きっと大丈夫。

その日までがんばりましょう。

必ず行きましょう!!!

 

心づもりは卒業式。

 

 

 

 

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